おしりと胃腸のコラム
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痔核(いぼ痔)のALTA硬化療法とは? ― 適応とメリット、知っておきたい合併症・再発について ―

痔核(いぼ痔)の治療には、軟膏や座薬などによる保存的治療のほか、ALTA硬化療法結紮切除術などの外科手術があります。

ALTA療法は、切除を行わず注射によって痔核を治療できる低侵襲な治療法ですが、すべての痔核に適しているわけではありません。

今回は、ALTA療法の適応、メリット、合併症、そして再発率について解説します。


ALTA療法とは?

ALTA療法とは、内痔核に「ALTA」という薬剤を注射し、痔核への血流を減少させるとともに、組織を線維化・固定することで、痔核を縮小させ、脱出や出血を改善する治療法です。

ALTAとは、有効成分である

Aluminum Potassium Sulfate Hydrate(硫酸アルミニウムカリウム水和物)
Tannic Acid(タンニン酸)

の頭文字をとった名称です。

痔核の4カ所に適切な深さと量で薬剤を注入する「四段階注射法」という特殊な手技を用います。

そのため、ALTA療法は単に痔核へ注射する治療ではなく、痔核の形態を正確に判断し、適切な部位へ薬剤を注入する技術が重要な治療です。


ALTA療法の適応は?

内痔核の脱出程度は、一般的にGoligher(ゴリガー)分類で評価します。

  • Ⅰ度:出血などはあるものの、痔核の脱出はない

  • Ⅱ度:排便時に脱出するが、自然に戻る

  • Ⅲ度:排便時などに脱出し、指で戻す必要がある

  • Ⅳ度:常に脱出しており、戻すことが困難

ALTA療法が特に良い適応となるのは、GoligherⅡ度~Ⅲ度の脱出性内痔核です。

日本の診療ガイドラインでも、ALTA療法は脱出性内痔核に対する治療選択肢として位置づけられています。

コラム『内痔核(いぼ痔)の病状進行と治療法選択について』の回を参照してください。

一方で、痔核には肛門の内側にある「内痔核」と、外側にある「外痔核」があります。

ALTAが作用するのは主に内痔核です。

したがって、

  • 大きな外痔核を伴う

  • 皮垂(スキンタグ)が目立つ

  • 外痔核成分の腫れや脱出が強い

  • 内痔核と外痔核が一体となった大きな痔核である

といった場合には、ALTA療法だけでは十分な改善が得られないことがあります。

このような症例では、結紮切除術などの外科手術や、外科手術とALTA療法を組み合わせた併用療法を検討します。


ALTA療法の最大のメリットは「痛みが少ない」こと

ALTA療法の大きな特徴は、痔核を切除しないことです。

そのため、結紮切除術などの外科手術と比較すると、

術後疼痛が少ない
術後出血が少ない
治療による身体的負担が少ない
比較的早く日常生活へ復帰できる

といったメリットがあります。

特に、術後の痛みが少ないことはALTA療法の大きな利点です。

そのため、「できるだけ痛みの少ない治療を希望したい」という患者さんにとって、有力な選択肢の一つになります。


ALTA療法にも合併症があります

「切らない治療だから安全」と思われることがありますが、ALTA療法にも特有の合併症があります。

比較的軽いものとして、

  • 発熱

  • 肛門部の違和感や痛み

  • 出血

  • 下腹部症状

などがあります。

一方、注意が必要な合併症として、

直腸潰瘍
直腸狭窄
肛門周囲膿瘍

などが報告されています。

1,180例を対象とした長期成績の報告では、38℃以上の発熱1.4%、直腸潰瘍0.9%、直腸狭窄0.4%、肛門周囲膿瘍0.3%でした(参考文献①より)。

また、2024年のシステマティックレビューでは、ALTA療法後の合併症全体の頻度は約5.2%と報告されています。

特に直腸潰瘍は、ALTAを注入した部分の粘膜が傷害され、潰瘍となるもので、出血や痛みを伴うことがあります。

ALTA療法では、薬剤を注入する位置・深さ・量が非常に重要です。

このため、正しい四段階注射法を習得した医師による適切な治療が必要です。


ALTA療法の最大の問題点は「再発」

ALTA療法を検討する際に、最も理解しておく必要があるのが再発率です。

ALTA療法は治療直後から数年間の成績は比較的良好ですが、結紮切除術などの外科手術と比較すると再発率が高く、時間の経過とともに再発が増加する傾向があります。

GoligherⅡ度・Ⅲ度を対象とした多施設研究では、5年後の治療成功率は、

Ⅱ度:約89%
Ⅲ度:約78%

と報告されています。5年再発率がⅡ度:10.7%、Ⅲ度:21.8%と一定数に再発や治療効果不十分が認められます(参考文献②より)。

さらに1,180例の長期追跡研究では、再発率は、

3年:約7%
6年:約27%
9年:約48%

と、長期になるほど増加しています(参考文献①より)。

このように、ALTA療法の再発率は患者さんの痔核の状態や再発の定義、観察期間によって大きく異なります。

したがって、単純に「再発率は○%」と一つの数字で表すことはできませんが、ALTA療法は痛みが少ない一方、外科的切除術よりも長期的には再発しやすい治療法であることを理解しておく必要があります。


当院では痔核の状態に合わせて治療方法を選択しています

錦織病院では、痔核の大きさ、脱出の程度、内痔核・外痔核の割合、症状、年齢、生活背景、そして患者さんのご希望などを総合的に判断し、

ALTA療法
外科手術
外科手術+ALTA療法の併用療法

などから適切な治療方法を選択しています。

「できるだけ痛みの少ない治療を受けたい」
「何度も脱出するので、できるだけ再発しにくい治療を受けたい」
「ALTA療法が自分の痔核に適しているか知りたい」

という方は、お気軽にご相談ください。

治療方法は、それぞれのメリットとデメリットをご説明したうえで、患者さんのご希望を尊重しながら慎重に決定します。

👉 錦織病院の痔核(いぼぢ) 詳細ページへ

参考文献

①Abe T, Kunimoto M, Hachiro Y, Ohara K, Inagaki M.
Long-term Outcomes of Aluminum Potassium Sulfate and Tannic Acid Sclerotherapy for Prolapsed Hemorrhoids: A Single-Center, Observational Study.
Dis Colon Rectum. 2022;65(2):271-275.

②Miyamoto H, Hada T, Ishiyama G, Ono Y, Watanabe H.
Aluminum potassium sulfate and tannic acid sclerotherapy for Goligher Grades II and III hemorrhoids: Results from a multicenter study.
World J Hepatol. 2016;8(20):844-849.

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