「直腸脱」とは、直腸が肛門から外へ脱出してしまう病気です。
脱出する直腸は数cm程度のこともあれば、進行すると10cm以上に及ぶこともあります。排便時だけ脱出する場合もありますが、症状が進むと立ったり歩いたりしただけで脱出します。
直腸脱は高齢者、特に女性に多くみられる病気ですが、高齢者だけの病気ではありません。
慢性的な便秘や排便時の強いいきみ、骨盤底や肛門括約筋のゆるみ、直腸を支える組織の弱さなど、さまざまな要因が複合して発症すると考えられています。
直腸脱ではどのような症状が出る?
代表的な症状は、肛門から直腸が脱出することです。
そのほかにも、
排便時に直腸が出てくる
脱出した直腸を手で戻す必要がある
出血や粘液がみられる
下着が汚れる
などの症状を伴うことがあります。
直腸脱では肛門括約筋の機能低下を伴うことも多く、便失禁を合併する場合もあります。
直腸脱は薬で治る?
直腸脱そのものを元の状態に戻す薬はありません。
便秘を改善したり、排便時のいきみを減らしたりする治療は症状の悪化予防には重要ですが、一度生じた直腸脱を根治する治療は、基本的には手術です。
直腸脱は良性疾患ですが、脱出を繰り返すことで日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
症状の程度だけでなく、年齢、全身状態、持病、肛門機能などを総合的に評価し、治療方針を決定します。
直腸脱の手術にはどのような方法がある?
直腸脱の手術は、大きく
① 経腹式手術
② 経会陰式手術
の2つに分けられます。
① 経腹式手術
お腹側から直腸を引き上げ、骨盤内で固定する方法です。
現在では腹腔鏡を用いて行われることも多く、代表的な術式として「直腸固定術」などがあります。
一般に再発率が比較的低く、根治性が高いことが利点ですが、全身麻酔を必要とし、経会陰式と比較すると身体への負担が大きくなる傾向があります。
比較的全身状態の良い患者さんなどで選択されます。
② 経会陰式手術
肛門側から行う手術で、Gant-Miwa法、Delorme法、Altemeier法、Thiersch法など、さまざまな術式があります。
経腹式と比べて身体への負担が少なく、腰椎麻酔や局所麻酔でも施行できる術式があることが特徴です。
そのため、高齢の方や全身麻酔の負担をできるだけ避けたい方にも選択しやすい治療法です。
一方、一般的には経腹式手術と比較して再発率が高くなる傾向があり、患者さんの状態に応じた術式選択が重要です。
当院で行っている「Gant-Miwa法+Thiersch法」
当院では、直腸脱に対して経会陰式手術である
「Gant-Miwa法+Thiersch法(ガント・ミワ+ティールッシュ法)」
を行っています。
Gant-Miwa法とは?
脱出した直腸の粘膜を数多くつまみ上げ、絞り染めのような要領で少しずつ縫い縮めていく手術です。
粘膜を順番に縫縮していくことで、脱出していた直腸が徐々に短縮され、肛門の中へ吸い込まれるように戻っていきます。
Thiersch法とは?
肛門の周囲に人工素材を輪状に留置し、広がってしまった肛門を適度に縫縮する手術です。
当院では、伸縮性を有する人工靱帯(Leeds-Keio mesh)を使用しています。
直腸の再脱出を防ぐとともに、低下した肛門の支持機能を補うことを目的として、Gant-Miwa法と組み合わせて行います。
Gant-Miwa法+Thiersch法は、比較的手術時間が短く、身体への負担を抑えて行うことができるため、高齢の患者さんが多い直腸脱に適した選択肢の一つです。
コラム『手術の必要性や手術率は? ④直腸脱編』の回もご参照ください。
患者さんに合った治療法を選ぶことが大切です
直腸脱にはさまざまな手術方法があり、すべての患者さんに同じ術式が適しているわけではありません。
脱出の程度、年齢、全身状態、肛門括約筋機能、便秘や便失禁の有無、患者さんのご希望などを総合的に考慮して、適切な治療法を選択することが重要です。
高齢化に伴い、直腸脱の患者さんを診療する機会も増えています。
「排便時に肛門から何かが出てくる」
「最近、脱出するものが大きくなってきた」
「手で戻さないと元に戻らない」
といった症状がある場合は、直腸脱の可能性があります。
直腸脱は、恥ずかしさから受診をためらわれる方も少なくありませんが、適切に診断し、患者さんの状態に合った治療法を選択することが大切です。
症状でお困りの方は、お気軽に当院へご相談ください。







