肛門の強い痛みや水ぶくれ――「肛門部ヘルペス」かもしれません
肛門の痛みというと、痔や切れ痔を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、肛門周囲に強い痛みや水ぶくれ、ただれがみられる場合は、肛門部ヘルペスの可能性があります。
肛門部ヘルペスとは?
肛門部ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)により、肛門周囲の皮膚や粘膜に炎症が起こる病気です。主にHSV-1型またはHSV-2型によって発症し、性器ヘルペスの病変が肛門周囲に現れたものとして扱われます。
一度感染すると、ウイルスは体内の神経節に潜伏します。その後、疲労やストレス、発熱、睡眠不足、免疫力の低下などをきっかけに再び活性化し、症状を繰り返すことがあります。
どのような症状が現れますか?
代表的な症状は、肛門周囲にできる小さな水ぶくれです。水ぶくれが破れると、浅いただれや潰瘍となり、強いヒリヒリ感や痛みを伴います。
次のような症状がみられることがあります。
肛門周囲のピリピリ・チクチクとした違和感
小さな水ぶくれや赤い発疹
皮膚のただれや潰瘍
排便時の強い痛み
かゆみや灼熱感
発熱、倦怠感、鼠径部リンパ節の腫れ
初めて感染したときは症状が強く、複数の病変や発熱を伴うことがあります。一方、再発時は比較的軽く、症状が出る範囲も狭い傾向があります。病変が肛門管や直腸に及ぶと、肛門の奥の痛み、残便感、粘液や出血などを伴うこともあります。
どのように発症しますか?
肛門部ヘルペスの発症には、**初めてウイルスに感染する場合(初感染)**と、体内に潜伏していたウイルスが再び活動する場合(再発)があります。
初めて感染する場合
単純ヘルペスウイルスは、感染している皮膚や粘膜との直接的な接触によって感染します。性行為による感染が多いですが、口唇ヘルペスのある方との接触によって、HSV-1型が肛門や性器に感染することもあります。
また、目に見える水ぶくれやただれがない時期でも、皮膚や粘膜からウイルスが排出され、感染する場合があります。
2回目以降に再発する場合
一度感染した単純ヘルペスウイルスは、症状が治まった後も体内の神経節に潜伏しています。そのため、再発は新たにウイルスへ感染したということではなく、体内に残っていたウイルスが再び活性化することで起こります。
疲労やストレス、睡眠不足、発熱、体調不良などによって身体の抵抗力が低下したときに、ウイルスが再活性化し、同じ場所やその周辺に水ぶくれや痛みが現れることがあります。
一般的に、初めて発症したときは症状が強く、発熱や広い範囲の水ぶくれを伴うことがあります。一方、再発時は症状が比較的軽く、狭い範囲に限られることが多いとされています。
治療について
治療の中心は、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス薬です。抗ウイルス薬は体内からウイルスを完全に消す薬ではありませんが、症状を軽くし、治癒までの期間を短縮する効果が期待できます。
特に再発の場合は、違和感や痛みが現れた早い段階から治療を開始することが重要です。再発を頻繁に繰り返す方には、抗ウイルス薬を一定期間継続する「再発抑制療法」を検討することもあります。
症状がある間は患部を清潔に保ち、強くこすらないようにしましょう。また、病変に触れた後は手を十分に洗い、目などほかの部位に触れないよう注意が必要です。
早めの受診をおすすめする症状
次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。
肛門周囲に水ぶくれやただれがある
痛みが強く、座ることや排便が難しい
発熱や強い倦怠感を伴う
排尿しにくい、尿が出ない
症状が広がっている
免疫力が低下する病気や治療を受けている
妊娠中または妊娠の可能性がある
肛門の痛みを「痔」と決めつけないことが大切です
肛門部ヘルペスは、恥ずかしさから受診をためらったり、痔だと思って市販薬で様子をみたりすることがあります。しかし、抗ウイルス薬は早期に開始するほど効果が期待できます。
肛門周囲の水ぶくれ、ただれ、強いヒリヒリとした痛みがある場合は、自己判断せず、当院へご相談ください。錦織病院では、肛門疾患を専門的に診療し、痔や切れ痔だけでなく、肛門部ヘルペスなどの感染症も含めて診断・治療を行っています。







