胃や大腸の病気についてはよく耳にしますが、「小腸の病気」という言葉はあまり聞かないのではないでしょうか。
実は、小腸は胃や大腸と比べて、がんなどの腫瘍が発生する頻度が非常に低い臓器です。
今回は、小腸に病気が少ないといわれる理由や、代表的な小腸疾患、診断方法について解説します。
① 小腸とはどのような臓器?
小腸は胃と大腸の間に位置する消化管で、十二指腸・空腸・回腸の3つに分けられます。
全長は数メートルに及び、消化管の中で最も長い臓器です。
主な役割は、食べ物の消化と栄養素の吸収です。小腸の内側には「絨毛(じゅうもう)」と呼ばれる細かな突起が無数に存在し、栄養を効率よく吸収できる構造になっています。
② なぜ小腸にはがんが少ないの?
胃がんや大腸がんは比較的よく知られていますが、小腸がんは全消化管がんの数%以下とされる、非常にまれながんです。
小腸は大腸よりも長いにもかかわらず、なぜがんが少ないのでしょうか。
その理由は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。
1.腸の内容物が比較的速く移動する
小腸では、食べ物が消化・吸収されながら比較的速く移動します。そのため、発がんに関係する物質が腸の粘膜に接触する時間が短い可能性があります。
2.大腸と比べて腸内細菌が少ない
小腸は大腸と比べて腸内細菌の数が少なく、細菌が産生する物質による粘膜への影響が異なると考えられています。
3.小腸には発達した免疫機能がある
小腸には、外部から侵入する病原体などから体を守る免疫機構が備わっています。こうした粘膜の防御機能も、がんが少ない理由の一つとして研究されています。
③ 小腸にはどのような病気がある?
小腸がんはまれですが、小腸にもさまざまな病気が発生します。
● クローン病
小腸や大腸に慢性的な炎症を起こす炎症性腸疾患(IBD)の一つです。腹痛、下痢、体重減少などの症状が現れ、炎症が長期間続くと腸管の狭窄や瘻孔を生じることがあります。
● 小腸腫瘍
小腸に発生する腫瘍には、腺癌、悪性リンパ腫、神経内分泌腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)などがあります。初期には症状が乏しく、貧血や腹痛、腸閉塞などをきっかけに発見されることがあります。
● 小腸潰瘍・薬剤性小腸炎
痛み止めとして使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などによって、小腸の粘膜にびらんや潰瘍が生じることがあります。出血や貧血の原因になる場合もあります。
● 小腸出血・血管性病変
小腸の血管拡張などが原因で出血することがあります。胃カメラや大腸カメラで出血源が見つからない場合、小腸からの出血が疑われることがあります。
● 腸閉塞(イレウス)
腸の内容物が正常に通過できなくなる病気です。腹部手術後の癒着や腸管の狭窄、ヘルニアなどが原因となり、腹痛、腹部膨満、嘔吐などを生じます。
このほか、感染性腸炎や小腸憩室などもあります。
④ 小腸の病気はどのように診断する?
小腸は胃と大腸の間にあり、非常に長い臓器です。
通常の胃カメラでは主に十二指腸まで、大腸カメラでは大腸と小腸の出口付近までしか観察できないため、小腸の大部分を直接観察することは困難です。
そのため、症状や疑われる病気に応じて、さまざまな検査を組み合わせます。
● CT・MRI検査
小腸の壁の肥厚、炎症、腫瘍、狭窄、腸閉塞などを評価します。小腸を詳しく調べるための専用の撮影方法もあります。
● カプセル内視鏡検査
小型カメラを内蔵したカプセルを飲み込み、小腸の内部を撮影する検査です。通常の内視鏡では届きにくい小腸の粘膜を観察できます。
● バルーン小腸内視鏡検査
特殊な内視鏡を用いて小腸の奥まで観察する検査です。病変の組織採取や狭い部位の拡張なども可能です。
⑤まとめ
小腸は通常の胃カメラや大腸カメラでは観察しにくい部分が多く、診断が難しい臓器でもあります。小腸の精密検査には、カプセル内視鏡検査やダブルバルーン小腸内視鏡検査などの専門的な検査が必要となる場合があります。
「小腸の病気は少ない」ことと、「小腸に病気が起こらない」ことは異なります。
当院では、消化器疾患や炎症性腸疾患(IBD)の診療に積極的に取り組んでおります。小腸疾患が疑われ、専門的な精密検査や治療が必要と判断した場合には、奈良県立医科大学附属病院をはじめとする高次医療機関と連携し、適切な医療機関へご紹介しています。
原因不明の腹部症状や貧血などが続く場合には、小腸の病気も考慮した適切な診断が大切です。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。







