便秘で悩んでいる方の中には、「便秘薬を毎日飲まないと便が出ない」という方も少なくありません。
便秘薬にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると、腸を直接刺激して排便を促す「刺激性下剤」と、
便を柔らかくしたり腸管内の水分量を増やしたりして排便を促す「非刺激性の便秘治療薬」があります。
慢性的な便秘を治療するうえで大切なのは、刺激性下剤だけに頼った治療を続けないことです。
刺激性下剤とは?
刺激性下剤は、大腸の粘膜や腸管神経を刺激して、大腸の蠕動(ぜんどう)運動を促し、排便を起こす薬です。
代表的な成分として、
センナ・センノシド
ダイオウ(大黄)
アロエ
ビサコジル
ピコスルファート
などがあります。
また、「自然由来」「植物由来」と表示された健康食品やお茶、サプリメントにも、センナ、キャンドルブッシュ(ゴールデンキャンドル)などの刺激性成分が含まれていることがあります。
「天然成分だから毎日使用しても安心」とは限りません。便秘薬や健康食品を常用している方は、一度成分表示を確認してみることが大切です。
なぜ刺激性下剤の連用は控えたほうがよいのでしょうか?
① 効き過ぎると腹痛や下痢を起こす
刺激性下剤は腸を強く収縮させるため、比較的速やかな排便効果が期待できます。
一方で、作用が強過ぎると、腹痛や腹部のけいれん、下痢を起こすことがあります。
② 長期連用による耐性が問題になることがある
特にセンナやダイオウなどのアントラキノン系刺激性下剤を漫然と使用していると、徐々に同じ量では十分な排便が得られなくなり、服用量が増えていくことがあります。
「最初は1錠で出ていたのに、最近は2錠、3錠飲まないと出ない」
という状態になっている場合には、便秘治療そのものを見直す必要があります。
③ 「下剤を飲まないと出ない」という悪循環になりやすい
刺激性下剤は排便効果を実感しやすいため、毎日の排便を求めて使用頻度や量が増えてしまうことがあります。
しかし、便秘治療の目的は「毎日必ず便を出すこと」ではありません。
腹部症状がなく、無理なく十分な排便が得られる状態を目指すことが重要です。
刺激性下剤だけに頼るのではなく、便の硬さや排便回数、排便困難感などを評価し、それぞれの便秘のタイプに適した治療を行う必要があります。
④ 大腸メラノーシスを生じることがある
センナやダイオウ、アロエなどのアントラキノン系刺激性下剤を長期間使用していると、「大腸メラノーシス」と呼ばれる状態を生じることがあります。
大腸メラノーシスとは、大腸粘膜の細胞に由来する色素が粘膜内のマクロファージに蓄積し、大腸の粘膜が褐色から黒っぽく見える状態です。
ほとんどの場合、自覚症状はなく、大腸内視鏡検査を受けた際に偶然発見されます。
大腸メラノーシス自体と大腸がんとの直接的な因果関係は、現時点では明確には証明されていません。
原因となる刺激性下剤を中止すると、時間の経過とともに徐々に改善していきます。
コラム『刺激性下剤で腸が黒くなる大腸メラノーシスとは?』の回をご参照ください。
刺激性下剤は「使ってはいけない薬」ではありません
ここで重要なのは、刺激性下剤そのものが悪い薬ということではありません。
刺激性下剤は効果が比較的確実であり、
「便が何日も出ず、どうしてもつらい」
といった場合の頓用や、他の治療で十分な排便が得られない場合のレスキュー薬として非常に有用です。
問題となるのは、自己判断で毎日のように長期間使用し続けることです。
慢性便秘症では、刺激性下剤は必要最小限の使用とし、基本的にはその他の便秘治療薬を中心に排便をコントロールしていきます。
慢性便秘ではどのような薬を使うのでしょうか?
慢性便秘では、便の状態や便秘の原因に応じて、腸を直接強く刺激しない薬を中心に治療します。
代表的なものとして、
酸化マグネシウム
腸管内に水分を引き寄せ、便を柔らかくします。
モビコール®(PEG製剤)
腸管内の水分を保持し、便を柔らかくして排便を促します。
アミティーザ®(ルビプロストン)
腸管内への水分分泌を促進します。
リンゼス®(リナクロチド)
腸管内への水分分泌を促し、排便を改善します。
グーフィス®(エロビキシバット)
胆汁酸の大腸への流入を増やし、腸管内の水分分泌と大腸運動を促進します。
などがあります。
これらの薬剤を便秘のタイプや年齢、基礎疾患、併用薬などに合わせて選択し、必要に応じて整腸剤なども組み合わせます。
「便秘だから下剤」だけではありません
慢性的な便秘の中には、
大腸がんなどによる腸管の狭窄
直腸脱
直腸瘤
排便時に肛門がうまく緩まない排便障害
薬剤による便秘
など、便秘薬を飲むだけでは改善しない病気が隠れていることがあります。
特に、これまで問題なく排便できていた方に急に便秘が出現した場合や、血便、体重減少、腹痛などを伴う場合には、大腸内視鏡検査などによる評価が必要になることがあります。
刺激性下剤は「毎日」ではなく「必要なときに」
慢性便秘症の治療で大切なのは、
「刺激性下剤で無理に出す」のではなく、自分の便秘の原因に合った治療で自然な排便を目指すことです。
刺激性下剤は有効な薬ですが、漫然と毎日使用するのではなく、必要に応じて頓用で上手に使用することが重要です。
現在、刺激性下剤を長期間使用している方も、自己判断で急に中止すると便秘が悪化することがありますので、医師と相談しながら適切な便秘治療へ変更していくことをおすすめします。
当院では、便秘症に対する薬物治療だけでなく、必要に応じて大腸内視鏡検査や排便機能の評価を行い、便秘の原因に応じた治療を行っています。
慢性的な便秘や便秘薬の使い方でお困りの方は、お気軽にご相談ください。







