「痔を長年放置していると、がんになるのですか?」
当院の肛門科外来でも、患者さんからこのような質問を受けることがあります。
肛門の代表的な病気には、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)の3つがあり、これらを「肛門の3大疾患」と呼びます。
コラム「肛門の3大疾患とは?」の回をご参照ください。
実は、これらの病気ががんになる可能性は、それぞれ異なります。
① 痔核(いぼ痔)と裂肛(切れ痔)はがんになる?
痔核と裂肛そのものが、がんに変化することは通常ありません。
痔核は肛門の血管や支持組織などの変化によって生じる病気であり、裂肛は肛門の皮膚が切れることで生じる病気です。
いずれも良性の疾患であり、長期間経過したからといって、それ自体ががんに変化するわけではありません。
ただし、注意していただきたい点があります。
それは、肛門癌や直腸癌でも、痔核や裂肛と似た症状が現れることがあるということです。
肛門からの出血や痛みを「いつもの痔だろう」と自己判断していると、別の病気の発見が遅れる可能性があります。
② 痔瘻(あな痔)は、まれにがんになることがあります
一方、痔瘻では、長期間にわたり慢性的な炎症を繰り返すことで、まれに「痔瘻癌(じろうがん)」が発生することがあります。
痔瘻は、肛門の内部と周囲の皮膚との間に、膿の通り道である瘻管が形成される病気です。
痔瘻癌は、特に10年以上にわたって炎症や排膿を繰り返している痔瘻に発生することが多いとされています。ただし、10年未満で発見される場合もあります。
長期間続く炎症が、がんの発生に関与すると考えられています。
もちろん、すべての痔瘻ががんになるわけではなく、痔瘻癌は非常にまれな病気です。
しかし、痔瘻は自然治癒が期待しにくく、基本的には外科的治療が必要となるため、適切な時期に専門医の診察を受けることが重要です。
痔瘻癌で注意すべき症状
長年痔瘻を患っている方で、次のような変化が現れた場合には注意が必要です。
肛門周囲の痛みが強くなってきた
肛門周囲に硬いしこりができた
ゼリー状の粘液が排出されるようになった
出血や排膿の状態が変化した
治療を続けていても症状が改善しない
痔瘻癌は、通常の痔瘻による症状と区別しにくい場合があり、診断が難しいこともあります。
疑わしい場合には、画像検査や組織検査などによる精査が必要です。
③ 肛門癌は「痔」だと思われていることもあります
肛門に発生するがんには、痔瘻癌以外にも、肛門管に発生する腺癌や扁平上皮癌などがあります。
特に扁平上皮癌の発生には、ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が関与することが知られています。
これらは痔核や裂肛ががん化したものではなく、別の病気として発生します。
肛門癌では、出血、痛み、しこり、違和感などの症状が現れますが、外見や症状だけでは痔核と区別しにくい場合もあります。
当院では年間500件以上の肛門手術を行っていますが、日常診療の中で年間1~2名程度、肛門部のがんを認めています。
頻度は高くありませんが、肛門の診察において、悪性疾患の可能性を念頭に置くことは非常に重要です。
④ 肛門の症状は自己判断せず、適切な診断を
肛門からの出血や痛み、腫れなどの症状の多くは、痔核・裂肛・痔瘻といった良性疾患によるものです。
しかし、まれに肛門癌や直腸癌などが隠れていることもあります。
特に、症状が長期間続いている場合や、これまでと症状が変わってきた場合には、専門医による診察をおすすめします。
錦織病院・錦織肛門病センターでは、肛門疾患の専門医が診察を行い、必要に応じて肛門鏡検査、大腸内視鏡検査、画像検査などを組み合わせて診断しています。
肛門の症状でお困りの方、長年痔の症状を繰り返している方は、お気軽に当院へご相談ください。







