~排便機能の専門施設からお伝えしたい「正しい排便」のすすめ~
痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)は、非常に多い肛門疾患です。
これらの病気の原因は単に肛門という局所の問題だけではありません。
実際には、排便の習慣や排便機能が、痔の発症や再発に大きく関係しています。
当院では痔の治療だけではなく、「正常な排便機能」を治療の重要な目標と考えています。
そのため、必要に応じて肛門内圧検査などを行い、排便のメカニズムを客観的に評価したうえで、投薬治療や排便指導を行っています。
排便は「力」で出すものではありません
多くの方は、「便は頑張っていきんで出すもの」と考えています。
しかし、本来の排便はそれほど強い力を必要としません。
便が直腸に到達すると便意が生じ、内肛門括約筋が自然に弛緩します。
同時に、外肛門括約筋と骨盤底筋群を適切に緩め、腹圧をわずかに加えることで、便はスムーズに排出されます。
正常な排便とは「強く押し出す」動作ではなく、「うまく力を抜く」動作なのです。
強いいきみは肛門だけでなく、骨盤底にも負担をかけます
長時間の怒責(いきみ)は、腹腔内圧を過度に上昇させます。
その結果、
肛門クッションの下垂
痔核の腫脹・脱出
裂肛の発症
骨盤底筋への過剰な負荷
直腸瘤や直腸脱など骨盤底疾患の進行
など、さまざまな障害を引き起こします。
近年では、痔核は単なる静脈瘤ではなく、肛門クッションを支える支持組織の脆弱化によって生じるという「肛門クッション滑脱説」が広く支持されています。
詳しくはコラム『痔核(いぼ痔)はなぜできるか??』の回を参照してください。
したがって、排便時の怒責を減らすことは、痔の予防だけでなく、肛門機能を長期にわたって維持するためにも重要です。
「便が出にくい=便秘」とは限りません
「便が出ない」という症状があると、多くの方は便秘薬を使用します。
しかし実際には、
便が大腸まで十分に運ばれないタイプ
直腸まで便は来ているが排出できないタイプ
肛門括約筋や骨盤底筋がうまく緩まないタイプ
など、原因はさまざまです。
排便困難の原因が異なれば、治療法も大きく変わります。
薬だけでは改善しないケースでは、排便機能を詳しく調べることが重要になります。
詳しくはコラム『便秘には種類がある?』また『便排出障害型便秘とは?』の回を参照してください。
当院では排便機能を専門的に評価しています
当院では、痔疾患だけでなく排便障害に対しても専門的な診療を行っています。
肛門内圧検査
肛門括約筋の締める力や緩める力、直腸の感覚などを測定し、便失禁や排便困難の原因を評価します。
手術前後の肛門機能の変化を客観的に比較することも可能であり、当院では痔瘻や直腸脱手術後の機能評価にも積極的に活用しています。
画像だけでなく、「どのような動きで排便しているのか」を確認できるため、患者さんご自身にも排便の癖を理解していただきやすい検査です。
「排便の指導」について
当院では、検査結果を踏まえて、
排便姿勢
適切ないきみ方
排便時間
食事や水分摂取
排便リズム
必要に応じた骨盤底筋訓練やバイオフィードバック療法
等の排便指導を行っています。痔を繰り返す患者さんは、「排便習慣を改善すること」が重要です。
痔を治すだけでなく、「肛門機能を守る」ことが大切です
近年の肛門外科では、「痔を切除する」「痔瘻を治す」といった病気そのものの治療だけではなく、術後も良好な排便機能を維持することが重要視されています。
当院でも、手術方法の選択や術後評価において、肛門機能を重視した診療を実践しています。
排便は毎日繰り返される生理現象です。
だからこそ、正しい排便習慣を身につけることは、痔の予防だけでなく、将来にわたって健康な肛門機能を維持するための最も重要な治療の一つと考えています。
当院では、病気だけでなく「排便機能」まで診る肛門外科を目指しています。
排便時の出血や痛みだけでなく、「便が出しにくい」「何度もトイレへ行く」「残便感が続く」「便失禁がある」といった症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。







