「トイレまで間に合わない」「知らないうちに下着が汚れている」「おならを我慢できない」などの症状はありませんか。
便失禁とは、自分の意思に反して便が肛門から漏れてしまう状態です。ガス(おなら)が漏れる状態は「ガス失禁」と呼ばれ、便失禁とガス失禁を合わせて「肛門失禁」と呼びます。
便やガスの漏れは決して珍しい症状ではありません。しかし、恥ずかしさから誰にも相談できず、外出や旅行を控えたり、仕事や趣味、人付き合いに支障を来したりすることがあります。便失禁は、生活の質(QOL)を大きく低下させる可能性のある疾患です。
便失禁にはどのようなタイプがありますか?
便の漏れ方によって、主に次のタイプに分けられます。
切迫性便失禁
便意は分かるものの、トイレまで我慢できずに漏れてしまう状態です。
漏出性便失禁
便意を感じないまま便が漏れ、気づいたときには下着が汚れている状態です。「いつ漏れたのか分からない」という方もいます。
混合性便失禁
切迫性便失禁と漏出性便失禁の両方の特徴を併せ持つ状態です。
ガス失禁
便は漏れないものの、ガス(おなら)を自分の意思で十分に我慢できない状態です。
便失禁の原因
便を我慢する機能は、肛門を締める肛門括約筋だけでなく、直腸や肛門の感覚、便の硬さ、骨盤底筋、神経の働きなどによって保たれています。
そのため、便失禁にはさまざまな原因があり、複数の要因が重なっていることも少なくありません。
主な原因として、次のようなものがあります。
・加齢による肛門括約筋や骨盤底筋の筋力低下
・肛門や直腸の感覚低下
・下痢や軟便、排便回数の増加
・便秘や直腸内の便の詰まりによる便漏れ
・出産時の会陰裂傷や会陰切開による肛門括約筋、神経の損傷
・肛門や直腸の手術後
・脊髄疾患、脳血管障害、糖尿病などに伴う神経障害
・直腸脱や直腸重積などの直腸・肛門の病気
・直腸がん手術後などにみられる排便機能の変化
・認知機能能の低下
・温水便座の常用
・原因を特定できない特発性便失禁
便失禁は年齢とともに増える傾向がありますが、若い方にも起こります。
また、出産による肛門括約筋や神経への影響が、出産直後ではなく、何年も経過してから症状として現れることもあります。
どのような検査を行いますか?
まず、便が漏れる頻度やタイミング、便の硬さ、便意の有無、出産歴、手術歴、服用している薬などを確認します。
排便の状態を記録する「排便日誌」も、症状や原因を把握するために役立ちます。
診察では、肛門周囲の状態や肛門を締める力などを確認します。必要に応じて、次のような検査を行います。
・肛門内圧検査
・直腸肛門の感覚検査
・肛門括約筋の形態を確認する肛門エコー
・排便造影検査
・大腸内視鏡検査
便失禁の原因は一つの検査だけでは判断できないことも多く、症状、診察所見、複数の検査結果を総合して評価します。
血便、急な排便習慣の変化、原因不明の体重減少などがある場合には、大腸がんや炎症性腸疾患などが隠れていないかを確認することも重要です。
便失禁の治療
便失禁の治療では、原因と症状に応じて、まず身体への負担が少ない保存的治療から始めます。
食事・生活習慣の見直し
下痢や軟便がある場合は、便の硬さや排便回数を整えることが重要です。食物繊維の摂り方を調整し、アルコール、香辛料、カフェインなど、症状を悪化させる可能性のある食品を見直します。
便秘が原因となっている場合には、直腸内に便をため込まないよう、排便習慣や便秘治療を調整します。
また最近では温水便座の常用が便失禁を増やすとの報告もあり、極力使用を控えることも大切です。
薬物療法
下痢や軟便を改善する薬、便の硬さを整える薬などを、症状に応じて使用します。服用中の下剤やその他の薬が便失禁に影響していることもあるため、薬の内容を確認することも大切です。
バイオフィードバック療法
肛門を締める力を機器で確認しながら、適切な筋肉の使い方や便意への対応を練習する治療です。肛門括約筋の収縮力や直腸肛門の感覚を改善することを目的として行います。
手術・専門的治療
排便に関係する仙骨神経を弱い電気で刺激し、排便を調節する機能の改善を図る「仙骨神経刺激療法」があります。
この治療は、一定の条件を満たす患者さんに対して専門施設で行われており紹介いたします。
一人で悩まず、ご相談ください
便失禁は、決して珍しい症状ではありません。「年齢のせいだから仕方がない」「恥ずかしくて相談できない」と我慢している方も少なくありませんが、原因を調べ、便の状態や排便習慣を整えるだけでも症状が改善することがあります。
当院では、症状や排便状態を詳しく伺い、必要に応じて肛門内圧検査などを行い、患者さん一人ひとりの原因に応じた治療をご提案します。バイオフィードバック療法にも対応しています。
便やガスの漏れ、下着の汚れ、便を我慢できないなどの症状でお悩みの方は、一人で抱え込まず、錦織病院へご相談ください。







