JAK阻害剤とは、サイトカインという免疫応答に重要なシグナルを伝える「ヤヌスキナーゼ:JAK」を抑えることで、腸の炎症を改善する薬です。
下記の3剤があり、全て飲み薬です。
トファシチニブ(ゼルヤンツ®︎:2018年に潰瘍性大腸炎に適応承認)
フィルゴチニブ(ジセレカ®:2022年に潰瘍性大腸炎に適応承認)
ウパダシチニブ(リンヴォック®:2022年に潰瘍性大腸炎とクローン病に適応承認)
炎症性腸疾患において、腸に炎症を引き起こしている炎症性サイトカインは、JAK-STAT経路を介して信号を伝え、免疫や炎症の反応に関与しています。
JAK阻害薬は、JAK-STAT経路におけるJAKの働きを阻害することでSTATが活性化されなくなり、炎症を抑えることができます。
生物学的製剤がTNFαやIL-12/23など、限られたサイトカインを抑えるに対し、JAK阻害剤は広範囲のサイトカインを抑えるため、幅広い病態に対応できます。
半減期(薬が身体から効果が無くなる時間)が短いので、効果がない場合に他薬への変更を行いやすいといったメリットがあります。
また生物学的製剤は抗体製剤なので、抗体を阻害するでは「中和抗体」により徐々に効果が得られなくなる「二次無効」がありますが、JAK阻害剤では抗体ができにくく、治療効果が持続することが多いとされています。
3種類あるJAK阻害薬の使い分けですが、フィルゴチニブ(ジセレカ®)は比較的炎症の強くない場合に、ウパダシチニブ(リンヴォック®)は比較的炎症の強い場合に、トファシチニブ(ゼルヤンツ®︎)はその中間の場合に使用する場合が多いです。
副作用に関しては、帯状疱疹、血栓症、感染症リスクの増加などがあります。
フィルゴチニブ(ジセレカ®)は帯状疱疹といった副作用が比較的少なく、ウパダシチニブ(リンヴォック®)は効果は強い分副作用にも注意が必要です。トファシチニブ(ゼルヤンツ®︎)はその中間です。
炎症性腸疾患治療でお悩みの方は当院へご相談ください。