痔核、裂肛に対する内科的な保存的治療には、軟膏・坐剤・内服薬があります。食事内容や生活習慣や排便の改善もあげられますが、今回は薬物治療について解説します。
薬物療法には軟膏・座剤といった「外用薬」と「内服薬」があります。
「外用薬」である軟膏・座剤には、抗炎症成分や痛みを鎮める成分、出血をおさえる成分など薬によってさまざまな成分が含まれており、肛門の痛み・出血・腫れ・かゆみを改善する効果があります。
使用に際してのポイントは軟膏・座剤に含まれるステロイドの有無とその分量です。
ステロイドが含まれる外用薬は、炎症や痛みを抑える力が強く、症状が出始めた急性期に使用します。副作用も数ヶ月程度ではほとんどありませんが、あまりにも連続で長期に使用しますと、粘膜が弱くなったり、肛門や膣周囲の感染症が増えることがあります。ステロイドが含まれる外用薬には下記の薬剤があります。
・ネリザ軟膏・坐剤:ステロイド含有量が多く14個まで使用可能
・強力ポステリザン(軟膏)、ヘモレックス軟膏、ヘモポリゾン軟膏、プロクトセディル軟膏
一方ステロイドが含まれない外用薬は、副作用が少ないことが利点で長期の使用に適しています。下記の薬剤があります。
・ボラザG軟膏・坐剤
また痔核や裂肛で出血量が多い場合は止血作用が優れている座剤を使用します。
・ヘルミチンS坐剤
軟膏・座剤の使用は朝の排便後、夜の入浴後や就寝前の1日に2回使用することが標準です。軟膏はゆっくり先端の細い部分を挿入すること、坐剤はしっかりと肛門の奥に挿入することがポイントです。先端にゼリー等の潤滑剤を塗ると挿入しやすくなる場合もあります。
「内服薬」にはヘモナーゼ配合薬、乙字湯があり、肛門部の炎症や血液循環の改善する作用があります。治療の主は「外用薬」ですが、補助的に使用する場合があります。
数カ月間これらの外用薬や内服薬をしっかり使用しても改善がない場合は外科手術が必要となる場合もあります。漫然とした使用は病状の更なる悪化をまねく場合もありますので、そのような場合は専門医療機関である当院にご相談ください。